ワークショップ「詩人・向坂くじら先生と旅する詩の世界」



2月22日(火)は詩人の向坂くじら先生をお招きし、ワークショップ「向坂くじら先生と旅する詩の世界」を開催しました。

向坂くじら先生(以下くじら先生)におうちフリースクールでぃありすで詩の授業を行なっていただくのは昨年に続き2回目。今年もでぃありすっ子たちの言葉の世界をぐぐんと広げる素晴らしい授業を実施して下さいました。

始業前からリラックスムードでおしゃべりに興じたのち、授業は「詩とはどんなものですか」というくじら先生の問いかけからレッスンは始まりました。

詩とは。

学校の教科書でおなじみの ” おう なつだぜ おれは げんきだぜ"ーあれは詩?

はい、詩ですね。

じゃぁ詩の定義ってなんだろう…と考えるところから生徒さんの活動は始まります。

その後、くじら先生お気に入りの詩作品を3つ鑑賞しながら詩の世界にさらに近づいていきます。

今年の生徒さんは”しゃべらせ上手”で、昨年以上に詩の形式や、作者の背景や、短歌についてのお話まで聞けて大変勉強になりました。

次にくじら先生が取り出したのが、どこにでもあるような街角の風景の動画。これを使って早速言葉の抽出の練習を行ないます。

準備運動が整ったところでいよいよ詩の制作に。

この時点で生徒さんもすっかり詩の世界のおもしろさにハマったようで、「休憩する?」の一言には「このまま続けます」と即答。

そのまま生徒さんとくじら先生のセッションスタートです。

緻密に、厳しく言葉を紡ぎ出す生徒さん。その様子を真剣な表情で見守るくじら先生。

後から聞いたお話だと、くじら先生は生徒さんの詩の制作中何度もうなりたい衝動に駆られたそうですが、創作活動を邪魔しまいとぐっと声を飲み込んだそうです。

そして完成した作品がこちら。




この作品を読んで、皆さんの心の中にはどんな余韻が残りましたか?私は、胸がえぐられるような苦しさを感じました。それと同時に、読み手が陥ってしまいそうな悲壮感をクールなウィットでかわされてしまったような”やられた!”感にくすぐられました。

「読み手の読み方の自由がどこまでも広く尊重される」これこそが詩のもつ詩らしさなのかなと、くじら先生の授業を通してそんなふうに渡辺は理解しました。


詩人として国内外で活動するほか、国語の家庭教師として教育にも携わるなど、幅広いフィールドで活躍中のくじら先生。 

そんなくじら先生の指導を直接に受けてみたいというあなたに朗報です!

なんとこの春、詩人向坂くじら先生は埼玉県桶川市に「国語教室 ことぱ舎」をオープンされました。詳細な情報は下記のnoteかくじら先生のツイッターにてキャッチしてくださいね。

くじら先生、今年も素晴らしいご指導をありがとうございました!

(生徒さんとパチリ。オフショットはいつもほんわかにこやか)

【向坂くじら先生の最近の活動はこちら】



月子、ハズゴーン | 今月の詩

キーワードをいれてください2021.10.01詩/向坂くじら家事が嫌いだ 風呂掃除も煮炊きもゴミ捨ても同じ 取りかかるだけで憂鬱が寄せてきて 肩がじっとり重たくなる だれかが両手を置いているみたいに これは 霊だ わたしの憂鬱ではない 霊が 自分の憂鬱を わたしのものに見せかけているのだ霊は主婦だ 名前を月子という 月子は三十三歳 夫の同僚に安産型といわれたことがある 月子は賢い 古い野菜の捨て際をよく知っている がたがたしない道をよく知っている 会釈のタイミングをよく知っている 家に帰ってくる 靴を脱ぐ 荷物を置く なまものを冷蔵庫に入れる ここではじめて電気を点ける ソファの上にタオルが積み重なっている 地獄だ と月子は思う 月子は地獄のこともよく知っている それはしじみの砂抜きであったり 座布団を正円に並べることであったりする そんなことには特に詳しい月子である月子はほとんどの家事を憎んでいるが 洗濯だけは少し好きだ 中でも干すのが好きだ しかしそれは錯覚であり 単に上方へ手を伸ばすのが好きなだけだった かごから洗濯物を引き抜く ぱんぱんと叩いてしわを伸ばす 手を伸ばして洗濯ばさみでとめる かごから洗濯物を引き抜く ぱんぱんと叩いてしわを伸ばす 襟首をハンガーに通す 手を伸ばして物干し竿にかける 月子はみんなに奥畑さんと呼ばれている かつては奥畑さんではなかったが いまはみんなが奥畑さんと呼ぶ だが地獄は月子のものであって 奥畑さんのものではない 奥畑さんのものにしてたまるかと月子は思う かごから洗濯物を引き抜く ぱんぱんと叩いてしわを伸ばす 手を伸ばして物干し竿にかぶせる 大きい方の洗濯ばさみでとめる 月子は歌がうまい とくにオペラがうまい しかし月子は賢い 歌い出したいからといって 歌い出していいわけではないと知っている いちばん危ないのが洗濯物を干すときだ 上を向くと歌い出したくなるのを 月子はいつもこらえている かごから洗濯物を引き抜く ぱんぱんと叩いてしわを伸ばす わたしが上方へ手を伸ばすとき わたしの喉の底を 知らない歌が 引っ掻く月子は 呼ぶ声がするとかならず答える それが奥畑さぁーんであろうと ひいちゃんママーっであろうと おかあさぁーんであろうと 奥さぁーんであろうと 宮本さぁーんであろうと おまえーっであろうと 月子ははあいと言って行く そ

花椿 HANATSUBAKI | 資生堂

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